令和4年6月 定例会(6月14日)

①市民生活向上への取り組みについて

 これまでの定例会におきましても、DX、デジタルトランスフォーメーションについて質問させていただきました。DXとは、デジタル技術やデータを使い、業務の効率化や行政サービスの改善を進めながら、人々の生活をよりよいものへと変革させることであります。

 

 少子高齢化と労働人口の減少、そしてコロナ禍に端を発した感染リスク低減するための非接触型の仕組みづくりとオンラインの活用など、デジタルテクノロジーによる社会の変革は、必要不可欠、不可避であるとともに、行政の効率化とサービス向上だけでなく、地域全体に新たな可能性をもたらすものとして、積極的に取り組んでいく認識が必要です。

 

 まず、行政内部の業務効率化と働き方改革、市民サービスの向上、EBPM、エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングという考え方を具体化する取組としてのDXについて伺います。

 

 EBPMとは、政策の企画立案をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化させ、その目的の達成のため、本当に効果がある政策手段は何かなど政策手段と目的の論理的なつながりを明確にし、このつながりの裏づけとなるデータなどのエビデンス、根拠を可能な限り求め、政策の基本的な枠組みを明確にする取組とされています。

 

 国の自治体DX推進計画の中でも、このEBPMの実践により行政の効率化、高度化を図ることが記載されております。

 

 自治体におけるEBPMの浸透、定着は期待されているとともに、政策、施策の有効性を高め、行政の信頼確保に資するものとして必要な視点であると考えます。

 

 そこで伺います。業務の効率化や、市民サービスへどのような影響が期待されるのか、そして、統計等のデータの活用の現状についてお伺いいたします。

総務課長(手塚秀司)

 国が令和2年に策定した「自治体DX推進計画」を推進することによって、行政の効率化や高度化を図ることが可能となります。

 

 本市がDXを推進していくにあたり、行政内部の業務の効率化や働き方改革では、システムやアプリを活用した業務の効率化、テレワークの推進、デジタル人材の育成が必要となります。市民生活の向上では、行政手続のオンライン化を進めることによって、市民の皆様が市役所に来庁されなくても、申請や届出が可能となり、市民サービスの向上に繋がります。

 

 また、本市が策定しております各種行政計画におきましても、国の統計データを活用して推計し、策定している計画も多くありますが、今後、日々のデータを蓄積し、共有する中でビッグデータも取り入れることで、より精度の高い客観的エビデンスとして利用することは可能となると考えております。


 今後、ビッグデータを取り入れて精度の高い、客観的エビデンスとして利用を可能にしていくとのことですが、行政組織内部のDXについては、国も既に指針を示しており、全国の自治体でもおおよその方向性が共通しております。手続のデジタル化による利便性、官民データの容易な利用、マイナンバーカードの普及活用、デジタル格差対策、情報システムの規格の整備と互換性の確保、AIやRPAなど先端技術の活用、デジタルテクノロジーを活用した新たな価値の創造という論点に収斂してきています。

 

 当市において、こういった論点の検討がなされているのか、また、どういったスケジュール感で進めていくのかお伺いいたします。

総務課長(手塚秀司)

 本市におきましては、国の自治体DX推進計画において、重点取組にあります事項6項目及び自治体DXと併せて取り組むべき事項2項目の8項目に準じて取り組んでおります。その中でも「情報システムの標準化・共通化」、「行政手続のオンライン化」、「マイナンバーカードの普及促進」とその他の事項といたしまして、「人材育成の強化」について、特に重点を置き、進めることとしております。

 

 本市のDX推進の取組のスケジュールにつきましては、国の自治体DX推進計画に合わせる中、「情報システムの標準化・共通化」については、令和7年度末までに構築してまいります。その後におきましても、継続的にDXを推進することによって、業務の効率化や行政手続のオンライン化を通じ、市民生活の向上に繋がるよう取り組んでまいります。


 市民生活の向上に繋がるという視点は大変重要だと思います。どの課がどのように役割を担い、どのように推進していくのかを明確にし、成果の見込みなども重視しながらDXを進めていっていただきたいと思います。

 

 次に、財政的メリットを意識したデジタル・テクノロジーの活用について伺います。

 

 人手が減るのか増えるのか、作業量が減るのか増えるのかでシステムの導入の是非を検討すべきであり、システムを入れてコストが高止まりとなるようなことは避けなければなりません。導入後のランニングコストも重要になってきます。

 

 例えば、コンビニエンスストアで、証明書を発行できるようになったものの1枚当たりの発行に要するサービス提供側、つまり、市側のコストが500円から800円で、発行すればするほど費用がかさむという自治体もあると聞いております。そうならないような制度設計に留意いただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

総務課長(手塚秀司)

 私たちが日常生活を送る上で、携帯電話や車、家電に至るまでデジタル・テクノロジーの恩恵を大きく受けております。デジタル・テクノロジーを駆使することによって、超高齢化の進行と労働人口の減少による人手不足などの社会的課題の解決に役立つものと考えております。

 

 行政事務におきましてもデジタル技術の発達により、書類の検索も容易に可能となり、書庫の省スペース化にも繋がります。また、業務資料のデータの共有は、許可されたユーザーが情報にアクセスすることによって、情報共有もスムーズにできます。このようにデジタル・テクノロジーを活用したメリットとして、時間の短縮や省スペース化が図られる等、限られた人材での生産性の向上が期待できるものと考えております。

 

 デジタル・テクノロジーを活用するためのシステム導入等の際に生じる財政的な負担を考慮しつつ、活用による効果として市民サービスの向上に繋がることを目指してまいります。


 全国各地の自治体では、DXを念頭に置いて地域全体をデジタル・テクノロジーで変革していく考え方をまとめる動きが急速に広まっております。各地の計画書を概観しますと、特徴として行政内部でのDX、いわゆるデジタルガバメントの取組と地域全体のあらゆる政策のDXを同時並行していく考え方が多いです。行政機関だけでDXするのではなく、地域のあらゆる課題をデジタル・テクノロジーで解決していくというビジョンを示すことが大切です。例えば、交通、子育てと教育、健康と医療、障害者への配慮、環境エネルギー、防災・減災、地域産業の振興などにもデジタル・テクノロジーを組み合わせてよりよく変化させていこうという計画書を策定しています。国のDX推進が加速する中、総務省が示した自治体DX推進計画も変更・追加が予想され、また進展著しいデジタル技術の動向を踏まえ、常にバージョンアップをしていかなければならないことも想像はできます。先ほど当市において取り組むべき事項、財政的なメリットについてお聞きしましたが、本市での中期的なデジタル化の方向性や具体的な取組を示す甲州市DX推進計画の策定が必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

総務課長(手塚秀司)

 国では、令和2年に自治体DX推進計画を策定し、昨年7月には地方公共団体に向け自治体DX推進手順書を示しています。本市が自治体DXを推進するに当たり取り組まなければならない内容は、国の示したビジョンを基本とした自治体DX推進計画で示されている中でも先ほどご答弁いたしました4点について特に重点的に進めていくこととしております。このように市のDX推進の方向性は既に定まっていることから、あえて独自の推進計画を策定する必要性等について総合的に検討してまいります。


 デジタル化はあくまでも手段に過ぎず、デジタル技術で具体的にどのような地域社会、そして甲州市を構築したいのか、それが市民の皆様の幸せにつながっていくのかという本質を見極め、本市として独自の具体的な目的やビジョンを示す上でも甲州市DX推進計画の策定を進めていっていただきたいと要望いたします。

 

 それでは次に、市内の事業者へデジタル化支援施策の構築に対する認識について伺います。

 

 市内の事業者、企業もものづくりだけでなくデジタルを付加していく時期が来ていると考えます。事業者ではウェブサイトすら自社で有しないケースも散見され、地域でDXを実現する障壁となっています。デジタル化の支援策を構築していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。

総務課長(手塚秀司)

 事業者が取り組むデジタル化については、ホームページの活用や現場向けのグループウエアの導入など、事業主自身にデジタル化の効果を実感してもらうことが重要になります。デジタル化によって業務の効率化が図られ、事業主がその有効性に気づくことがまずは重要になると考えております。

 

 本市では、市内の小規模事業者を支援する施策として甲州市小規模企業者持続化補助金を制度化しております。対象となる事業者は、市内に事業所を有する小規模企業者であり、ホームページの作成や更新、機械装置費、新商品開発費などデジタル化に関連する取組も補助対象に含まれております。また、情報発信等において市と密接な関係にある市観光協会では、会員事業者に対してホームページにおいて個々の観光情報の作成、掲載などの支援を行っております。

 

 今後も国等が発する情報に注意し、関係課、関係団体と連携を図る中で、必要な支援策等を研究してまいります。


 次に、庁舎内におけるフリーWi-Fiの使用目的について伺います。

 

 フリーWi-Fiとは、外出先でインターネットに無料で接続できるサービスのことです。駅や飲食店などでも利用できる場所が増えており、集客効果も大いに期待ができるということであります。海外では自治体単位でWi-Fiを整備するエリア整備が一般的ですが、日本の場合交通機関や飲食店などそれぞれが整備しているのが現状です。利用者の視点で考えれば少々不便ではありますが、今後地域単位としての取組も進んでいくのではないかと思っております。

 

 そこで、伺います。庁舎内におけるフリーWi-Fiの設置目的はどういったものでしょうか。

財政課長(清水修)

 スマートフォンやタブレット等の電子機器の普及に伴い、公共施設をはじめとする多くの施設においてWi-Fiスポットが整備されております。本市におきましても、県観光推進機構の助成を受ける中で、インバウンド増加対策の一環として平成24年4月に本庁舎1階市民ロビーにて無料Wi-Fiスポットを設置し、1日2回、1回15分を限度に利用が可能となっております。インバウンド対策ではありますが、市役所窓口にお越しのお客様はもとより、閉庁日にも市民ロビーは開放し休憩スペースとしておりますので、市民の皆様にも自由に利用できる旨、広報、ホームページ等でお知らせをしてまいります。


 詳細にご答弁いただきましたが、市民の皆様から庁舎内のWi-Fiスポットはどこなのかというようなお話もお聞きすることがあります。ぜひ周知、表示は分かりやすくお願いしたいと思います。

 

 また、災害が発生した際の混線、混雑により、インターネットの通常利用が困難となった場合にでもフリーWi-Fiはつながりやすい通信手段であることから、その有効性は高く、避難所や地域での情報提供等に活用できる手段としての効果が期待できます。ほかの公共施設等においてもそうですが、利用者のニーズや利便性、そして費用負担のバランスを見据え、平時と災害対策両面から進めていっていただきたいと思います。

 

 次に、地域を挙げたDXについて伺います。

 

 地域のDXは行政機関だけでやるものではなく、行政内部だけで変わるものでもありません。地域全体でデジタル・テクノロジーを活用する意識を広げること、またその意識を広げることのできる人材育成が必要と考えます。庁内においては若手職員を中心としたDX推進プロジェクトチームで活発な議論がされていると聞いておりますが、どのような内容なのかお伺いいたします。

総務課長(手塚秀司)

 昨年8月に若手職員を中心とした甲州市DX推進プロジェクトチームを立ち上げ、本市におけるDXの実現に向けた市民サービスの向上として「行政手続の見直しと問合せ対応の見直し」、業務の効率化・最適化として「行政文書の電子化、庁内の環境整備」、まちづくりとして「観光DXの推進、デジタルデバイド対策」を6つのワークンググループにおいて調査研究を進めております。昨年度は、4回のDX推進プロジェクトチーム会議を開催し、年度末には中間報告を行っております。本年度の取組といたしましては、昨年度研究したICTツールを試験的に導入し、検証を進めております。また、継続している調査研究もありますので、先進自治体の事例など研究を進め、市民の皆様により利便性の高い行政サービスの提供につなげていけるよう進めてまいります。


 今年はICTツールを導入し、検証を進めていき、先進自治体の研究もされていると。ぜひ、この先進自治体の事例については、当市では難しいとかできないという前提ではなく、どうやったらできるのかを念頭に強力に進めていっていただきたいと要望いたします。

 

 また、DXが地域、そして自治体にどのような劇的な変化をもたらし、その変化が市民の幸せや満足度の向上につながっていくのかという、甲州市としての考え方を市民や事業者と共有してDXを強力に推進していく上で、各界、各層、得意とする方々の共創の場、テーブルも必要ではないでしょうか。

 

 それから、地域の課題解決や市役所組織の変革を進めるに当たり、国も外部人材の活用を推奨していますが、自治体としてさらに踏み込んでメガプラットフォーマー、いわゆるインターネット上で大規模なサービス提供している企業とも連携を進めていくべきだと私は考えます。全国の自治体でも、グーグルやマイクロソフトといったメガプラットフォーマーと連携して、地域の課題解決や行政の組織変革を進めている例も増えてきています。連携の仕方も様々であり、教育や防災、観光振興などテーマ別の連携から、地域全体のスマートシティ化での連携といった大枠のものまで、地域の実情に反映した形態が全国各地で既にみられています。我々の想像を超えた技術が様々な社会の変革、よりよい社会の実現をもたらしている例を数多く聞いています。地域を挙げたDXを進めていく上で、メガプラットフォーマーなどとも明確な形の連携も視野に入れ、今後取り組んでいっていただきたいと思います。

 

 先週の土曜日のことですが、市内の中学生と姉妹都市であるアメリカのエイムズ市の中学生とがオンラインによる交流を行いました。見させていただきましたが、スポーツ、食べ物、文化、学校での生活とテーマごと4グループで活発な交流をしている様子がうかがえました。参加された本市の中学生が、こうしてオンラインでの交流ができたことは思っていた以上に大変有意義で楽しかったとお話していたことが印象的でした。グローバル人材育成につながる国際交流の機会の提供、本市にとっても大変意味があります。コロナ禍という現状に甘んじて交流を停滞させてしまうのではなく、子どもたちに国際交流の機会の提供をデジタル・テクノロジーという技術を使い実現できました。引き続き市民生活向上のためDXの推進に取り組んでいっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。


②子どもにやさしいまちづくりについて

 誰もが安心して子どもを生み、育てられることができ、次世代を担う子どもが健全に成長することは、全ての人々の願いであります。しかし、子どもを取り巻く環境は大きく変化しております。

 

 初めに、子育て短期支援事業についてお伺いいたします。

 

 本年度より実施している事業となりますが、内容はどのようなものでしょうか。お伺いいたします。

子育て・福祉推進課長(武澤勝彦)

 この事業は、保護者の疾病や、児童相談所や警察の介入までにはならないDVや育児放棄、生活困窮などの事案に対し、一時的に養育が困難になった場合等に、児童養護施設等において一定期間養育や保護を行うものであります。内容的には2つの事業があり、一つ目には短期入所生活援助、いわゆるショートステイ事業であります。先ほど申し上げたような事情により一定期間、原則7日以内、子どもを預かります。

 

 もう一つは、夜間養護、いわゆるトワイライトステイ事業であります。先ほどの事情等により平日の夜間、または休日において生活指導、食事の提供等を行います。現在市内の児童養護施設と委託契約を締結しているところでございますが、今後は児童の安全面などを考慮する中、市外の施設などとも契約をしてまいりたいと考えております。


 私、令和2年12月定例会におきまして、子育て短期支援事業について質問いたしました。家族構成や、個人の価値観も多様化していく中で、従来型の支援だけでなく多角的な事業の拡充の必要性をお伝えさせていただきました。子育て短期支援事業については、第2期甲州市子ども・子育て支援事業計画策定のためのニーズ調査では、本市では一時預かり事業、ファミリーサポートセンター事業などが充実していること、また祖父母等の支援が受けられることから、市民の皆様からのニーズはなかったとのご答弁いただきましたが、今回この事業実施は、その後の庁内の機構改革を経て新たな体制になることで市民の皆様からのニーズをより一層的確に把握してのものだと思っております。引き続き、関係各所と連携を取りながらよろしくお願いいたします。

 

 次に、この子育て短期支援事業について、子ども家庭障害者支援センターでの役割、先ほど子育て・福祉推進課長の答弁にありました事案の発生等について把握されていらっしゃるのでしょうか。お伺いいたします。

福祉総合支援課長(町田享子)

 子ども家庭障害者支援センターでは、家庭において一時的に養育が困難となる事案に対しこれまでも保護者の負担が軽減できるよう支援してきたところでありますが、中には親子の距離を一時的に離し、育児の不安や育児疲れによる身体的、精神的不安を軽減する対応が必要と考えられる事案もありました。そこで、このような状況を改善するために、センターでは必要な方に子育て短期支援事業の活用を促すことで、24時間体制での支援が受けられ、親と子の生活環境を整えることが可能となりました。今後も家族の良好な関係性が保て、安心して子育てができるよう支援してまいります。


 子どもを取り巻く環境は大きく変化していると言われています。その要因となるのは、結婚や子どもをもつことに関しての多様化、子どもに対してのいじめや虐待への関心の高まり、仕事と子育てとの両立を図ることの雇用環境を整備する必要性の増大、子育てを担い支える地域や家庭の機能低下などもあるとされています。そこから急速な少子化の進行、あるいは経済活動の衰退、地域社会の活力低下、子どもの社会性の減退など憂慮すべき状況が生まれております。このような現況に対処するためには、仕事と子育てとの両立が図られ、地域が一体となって支える仕組みが必要になります。社会環境が大きく変化する中にあって、行政からの問いかけはより重要さが増すのではないでしょうか。行政として親や家庭に対ししっかりとアプローチすることが大切だと考えます。引き続き、子育て支援事業の拡充を図っていっていただきたいと強く要望いたします。また、本当に支援が必要な方々に相談してもらえるように促すことや、呼びかけなど積極的に働きかけ、支援事業の情報を届けていただきたいと思います。アウトリーチとしての視点も重視しながら、周知徹底をされるようお願いいたします。

(以上)